Webデザイナーは「ブラック」なのかどうか、Webデザイナー志望者にとってはかなり気になるところだと思います。
Web制作会社、Webマーケティングの会社、ネットショップ(ECサイト)の会社、印刷会社などに勤務したり、役員として関わったりした経験から、Web業界とブラック企業の実体験やブラック企業の可能性が高い会社を簡単に見分ける方法をお伝えします。
そもそも「ブラック」とはどういうことか?
一般的に仕事において「ブラック」や「ブラック企業」とは、以下のようなイメージかと思います。
- 給料が低い
- 残業が多く、残業代も出ない、徹夜もある
- 休日出勤が多く、手当も無い
- 休みが少ない
- 昇給や賞与が無い
- 交通費や福利厚生が無い
- パワハラが多く、理不尽なことが多い
- まともに仕事を教えてくれない
「パワハラ」や「仕事を教えてくれない」などの人間関係の部分もありますが、主には労働基準法が守られず、正当な対価が支払われないような事が多いと「ブラック」「ブラック企業」と、人は表現するのだと思います。
上記のようなことが全て該当する「超絶ブラック企業」もあるかと思いますが、部分的に該当するケースも多々あるでしょう。私の経験上、最もWebデザイナーが遭遇するのは「長時間労働」や「休日出勤」などの「労働時間の問題」です。
Webデザイナー時における長時間労働の実体験や実例
朝9時出勤、深夜23時半退社が基本だった

Web制作会社でお世話になっていた時、そのWeb制作会社では朝9時出勤で深夜23時30分がデフォルトの労働時間でした。
なぜ深夜23時30分かというと、終電に間に合うギリギリの時間が23時30分だったからです。終電に間に合わず徹夜になることもしばしばありました。
冒頭の写真は当時の私を思い出します。会社を出たらダッシュで駅に向かわないと最終電車に間に合わない、というイメージにピッタリだからです。実際に間に合わず、電車に乗れなくなり仕方が無いので会社に戻って仕事をし、泊まったこともあります。
残業代は給料に含まれているということになっていましたので、残業代が別途支給されることはありません。
Webマーケティングの会社では、自社サイトの制作・運用・マーケティングを担当していましたが、新規事業の立ち上げで当初の制作部隊は私一人だったので、こちらも同じく朝9時から深夜23時30分まで働き、たびたび徹夜していたという状況です。
ネットショップの会社では土曜日の午前中は仕事だったので、初めから週休二日ではありません。
また、Web制作会社やWeb業界の最大手で勤務していた複数の知人がいますが、みんな揃って、深夜2~3時まで働くのは普通だと話していました。
もう完全にブラックですよね…
弁当は二食分持参、仮眠は「イス寝」、電車でフラついて通報される、腰が痛くなって立てなくなる
長時間労働の「行く末」もお伝えしたいと思います。
長時間労働のため、家での夕食は不可能でした。既に結婚していた私は妻にお弁当を二食分作ってもらい持参していました。お昼用と夕食用です。
徹夜の際は、仮眠をする時に椅子を3つ並べてその上に寝るという、通称「イス寝」を体得しました。
朝、会社に向かう電車の中で立っていたら、汗が多く出て、膝がガクっとなり、フラついたところ、周りの乗客が「この人ヤバイ」となって、駅員さんに通報され、次の駅で休むように電車を下されました。私のせいで、電車が3分ほど遅れたと思います。でも、下りた駅で次の電車に乗って普通に出勤して仕事をしていました。
徹夜明けか、休日出勤で誰もいないオフィスで仕事をしていたら、腰が痛くなって立てなくなりました。どうしようかと思いましたが、床でうずくまりながらしばらくすると何とか歩けるようになったので、やっとの思いで帰宅しました。
Webデザイナーはなぜ長時間労働になりやすいのか?
なぜ、Webデザイナーにはこんなにも長時間労働になりやすいのでしょうか? これにはいくつかの理由があります。
- 少ない人数で案件数をこなさないと会社が儲からないため、長時間労働が前提のビジネスモデルになっている
- 営業側にお客様との調整能力が無い
- お客様による短納期のご要望
- お客様からの修正が多かったり、難しい要求が多い
お客様側の問題も無くはないかもしれませんが、Webデザイナーが長時間労働に陥りやすい最大の理由は、「会社側の社員を管理する能力」によるところが大きいです。
ビジネスモデルが悪ければビジネスモデルを工夫する、お客様からのご要望も、工夫して双方にメリットがあるようにスケジュールを組み立てることは不可能ではありません。
経営者や経営陣、管理職の能力が問われます。
ところで、「ブラック」だから、「ブラック企業」だからと躊躇するなら、本当にやりたい仕事ではないから、やめた方がいいよ
私が長時間労働をしていた時、身体的には大変でしたが、充実していました。なぜなら好きな仕事だからです。
理想としては、これまでご紹介した私の体験のようなことが無ければ最高ですし、長時間労働を奨励するつもりは微塵もありませんが、「手に職を付ける」ような仕事であれば、特に駆け出しのころは、長時間労働を覚悟しなければならない局面はあるかもしれません。
本当に好きな仕事なら長時間労働も頑張れるし、技術も向上して昇進する
私の同級生に料理人がいますが、給料も安く、長時間労働で休みも少ないという環境で働いていましたが今は有名店で料理長になっています。
私の父は大工ですが、私が学生の頃は月に二日しか休みがありませんでした。週休二日ではなく、二週間に一回の休みです。家族のために休みなく働いてくれていた父親の偉大さを、子を持つ親になって改めて感じ、本当に感謝しています。そして父は大工の棟梁(とうりょう)というリーダー的ポジションになりました。
私も管理職に昇進したり、経営陣として参画するという経験をしました。
好きな仕事なら、他人から見たら苦痛に感じるようなことでも、本人にとっては、そうでもなかったりします。好きな仕事だったら長時間労働もけっこう頑張れます。そして長い時間、働く分、早く技術も向上し、昇進もしやすくなるため、給料も上がって、良い事づくめですよ。
ただ、体調管理には気を付けた方がいいですけどね。
Webデザインが本当に好きかどうかに関しては以下の記事もご参考ください。
» 未経験からWebデザイナーを目指している方に質問。本当に好きなの?
Webデザインが本当に好きなら一時の「ブラック」は超越できる
今回、私が体験したことを読んで、「うへ~、Webデザイナーって超ブラックじゃん」とか「Web制作会社やWeb業界はブラック企業ばっかり」などと躊躇する場合は、WebデザイナーやWeb業界はやめた方がいいです。もしかすると、技術職系の仕事は全般的に向いてないかもしれません。
たぶん、WebデザインやWebサイトの制作がそんなに好きじゃないんだと思いますよ。多少好き程度なら趣味でやっていた方が幸せです。
Web業界でも「ホワイト企業」はある
それに辛そうなことばかりご紹介しましたが、Web制作会社やWeb業界でもブラック企業じゃないまともな企業はもちろんあります。逆にWeb業界以外でも「超絶ブラック企業」はいくらでもあります。
現在、私はIT業界にて社内のWebディレクターをしていますが、朝9時出勤で、夜は遅くても19時までには帰宅しています。先に挙げた「ブラック」や「ブラック企業」の要素はたったの一つもない、という、いわば「ホワイト企業」に勤めています。
また、以前私が勤務していた会社では、入社から数年は長時間労働がありましたが、少しずつ労働時間は減っていき、最終的に残業は完全に禁止の会社になりました。社員の頑張りと経営陣の能力の賜物です。経営陣の能力によって、「定時勤務でも会社がやっていけるようにできるんだ」ということをこの時に学びました。
「ブラック」じゃない働き方になるまで転職なりすればいいだけ
好きでWebデザイナーとなり、残念ながら就職や転職した会社が「ブラック企業」だったとしても、会社が徐々に「ホワイト企業」になっていく可能性もゼロではありませんし、転職すれば「ホワイト企業」とは言わなくても、それほど「ブラック企業」ではない会社に勤めることができるかもしれません。
技術を積み上げていきながら、そういう働き方ができるように転職するなりしていけばいいだけなのです。本当にWebデザインが好きなら一時的な「ブラック」は超越できるはず。
Webデザイナーは技術を磨き、「プログラミング力」「マーケティング力」など、付加価値を付けていけば、比較的容易に転職できます。「Webデザイン」を軸にして、できることの幅を広げていければ、最初は「ブラック」だったとしても脱却していくことはできるのです。
ブラック企業の可能性が高い会社を簡単に見分ける方法
それでもやはり、できれば「ブラック企業」じゃない会社で働きたいですよね。
私の経験から、「ブラック企業」かどうかを見分ける簡単な方法がありますのでご紹介すると、それは、ブラック企業は
正社員が10人以下の会社
が多いです。もちろんそのような会社が全てという訳ではありませんし、10人以上の会社でも「ブラック企業」はたくさんあるでしょう。
ただ、Web制作会社やWeb業界の会社で、正社員が10人以下の会社は「ブラック企業率が高い」というのが私の経験から言えます。
基本的に社員が10人以下という会社は経営陣も経営自体の経験が乏しく、経営能力がまだまだな事が多いんですね。
付け加えて、
社長がワンマン、自己主張が強すぎる
会社も「ブラック」である可能性が高いです。これは社長と言えども完璧な人間ではないので、全ての判断が最良ではない中、まわりにイエスマンしかおらず、他人の意見を聞かずに何でも自分だけで決めてしまうことで、「ブラック」なことが文化になってしまうように思います。
「ブラック」じゃない会社の選び方
まず、求人情報や会社のWebサイトを確認して、社員数が10人以下の会社はなるべく選ばない、というのが得策です。
しかし、未経験からWebデザイナーを目指す場合は、対象がそのような会社も避けて通れないかもしれませんので、その際は、覚悟を決めるしかありません。
また、「社長がワンマン」とか「自己主張が強すぎる」という面は、求人から察知するのは難しいのですが、その会社のWebサイトやブログ、社長ブログやTwitterなどを見て判断するしかありません。
Web上にその社長の情報が無ければ無いほど、自己主張は強くなさそう、と判断できます。
まとめ
- Webデザイナーの仕事は長時間労働という面では特に「ブラック」になりやすい傾向にある
- でも、Webデザインが本当に好きなら一時的な「ブラック」は超越できる
- もし今がブラックなら、日常的にスキルアップを心がけ、転職などをしてブラックじゃない働き方を目指す
- ブラック企業を見分ける方法は「社員数10人以下」と「社長がワンマンか・自己主張が強いか」
Web制作会社やWeb業界に限らず、全ての業界・業種に言えることですが、残念なことに、ブラック企業はどこにでも存在します。
もし、ブラック企業に入ってしまい、他人が困難と思えることがあっても、(一時的ならという前提で)好きな仕事なら割と苦にならないもの。
ここでもやはり、Webデザインが本当に好きかどうかが問われます。
Web業界でも「ホワイト企業」は確かに存在するので、できることを増やして転職するなりして、理想の働き方を追求しましょう。